SPACEの仕事は、大きく分けて7割が店舗関係、2割が住宅、その他が1割でしょうか。当然、おのおのの仕事に対して、デザイン料をいただきます。しかし、クライアントにとっては、そのデザイン料の意味あいが物件によって違ってきます。店舗の場合は、流行るお店をデザインすれば、出した費用も売り上げという形でもどってきます。出資された資金も、何年かで消却してもらえ、満足感を味わっていただけると思います。
対して、住宅の場合は、デザイン料も工事費もだす一方で、もどってくることはありません。ということは、住みながらその生活の満足感で消却してもらうしか方法はありません。だから、店舗と住宅では、クライアントとの関わり方が違ってきます。
店舗の場合、クライアントの思いやイメージはありますが、それは必ずしも、その店のターゲットに対して、合っているとは限りません。流行る店は、クライアントが満足する以前に、お客様が満足することが必要です。よって、デザインもクライアントのためというよりは、そのお店に来られるお客様のためという考え方で、クライアントと調整をとりながら進めていきます。
住宅の場合は、クライアントの思いやイメージを、いかにうまくデザインに取り入れるかが、満足感を得てもらうことの重要なポイントとなります。クライアントも一人ではなく、ご家族も含め、クリアしないといけないポイントは多岐にわたります。全てをクリアすることは不可能ですが、頃合いの良いところを見つけるために、クライアントと調整をとりながら、デザインを進めていきます。
以上述べたように、店舗も住宅も、いろいろな思いやイメージ、立地、予算等々、どれとて同じ条件のものはありません。毎回、七転八倒して出来上がった末に、クライアントが満足されている様子を見て、やっとデザイナーとしての責任が果たせたという思いが、また次への活力となっています。
杉木源三