満腹するまで食べないで、少しひかえ目にしておくことを「腹八分目」という。私は空間をデザインする時に、いつもこのことを念頭においてデザインしている。
言うまでもないが、空間デザインとは人や物が入る空間をデザインすることである。つまり、人や物が入って100%で美しく、居心地の良い空間であることが望ましい。だから、100%を想定して、80%の空間のデザインをしている。
だから私のデザインした空間を写真に撮ると、少し物足りないように思うかもしれない。しかし、満腹にデザインされた空間よりも、八分目の空間の方が、住宅であれ、店舗であれ、それに加えられる装飾のしかたで、使い手の個性やにおいを出すことができる。
いつまでもあきずに、長く使える空間は、ある意味、使い手が汚すことができる余地が残されたものであると思います。
杉木源三