1994年、油小路の御池を上がったところに、ボナペティという名のBarをデザインさせていただきました。
ボナペティとはフランス語で「召し上がれ」という意味で、当初は簡単な料理もだすバールのような計画でした。その後、純粋なBarとして営業されています。もともとシャッターのついた物件だったので、昼間はシャッターが閉まり、夜、営業の時に店の全貌が現れます。そのため、インパクトのある外観を考えました。
錆びさせた異形鉄筋を竹に例えて、竹が集積した壁をデザインし、入口のドアは取手をつけずに、わずかに壁と角度をつけ、手がかりになるようにしました。Barということですが、外観からは何の店かわからないお店です。
OPEN当初、近くのホテルに泊まっていた、女優の万田久子さんが宝石店と間違えて入ってこられて、それから常連になっていただいたことは逸話となっています。万田さんの紹介で、撮影で京都に来た俳優や業界人の隠家になったこともうれしいお話です。もう20年近く、1ミリもデザインを変えずに営業していただいています。本当にありがたいことです。
杉木源三