2002年、まんざら亭のオーナーが「この絵を使って店をつくりたい」と事務所を訪れられました。その時、打合せテーブルの上には春画の画集が開かれていました。場所は祇園、お茶屋の女将さんの住まわれていた町家を借りて店をつくるとのこと。もともと、隠れ家のように使われていた家なので、その雰囲気を受けついで、店名も「隠」となり、カップル対応の店として、計画が始まりました。
1Fはカウンター席と個室が2室、それらはまんざらの従来の落ち着いたデザインとしました。そして、2Fはかなり小さい個室に分割し、その天井にはインクジェットで春画をプリントした木製パネルを貼りました。かなり絞った照明の部屋に入り、目が慣れて天井を見上げた時の衝撃を思い描くと、オープンが待ち遠しい、大人の遊び心をくすぐる、しゃれたお店となったと思います。後日談で、まんざらは昔からの顧客の多いお店ですので、「隠」と聞いて、喜んで来たものの、知り合いばかりで隠れにならなかったというお話をお聞きして、微笑ましい気持ちになったことを思い出します。今は「隠」というよりは、皆様によく知られたお店となっています。
杉木源三